無力

分かっていたのに

いつかその時がくるなんて分かっていたのに

あまりにも無力

16時7分
嘉子から

お姉ちゃんの陣痛が5分間隔になってきてる

との一報

いよいよだ

本当にいよいよだ

お母さんの
還暦のお祝いの日に
生まれてくるなんて

なんて素敵すぎる
誕生日プレゼントだろう

兄は

もう、どうしようもなくて

さっきから

いろいろが手につかない

ここ東京で

何が出来るわけでもなく

病室で
ただただ戦っている

妹の安産を
祈るのみしか出来ない

昨日の朝にメールが来た

『入院なう
今日中か、明日未明か~くらいみたいやよ◎
早く赤ちゃんに会いたい!』

緊張感無く

すごくワクワクするのも分かるけど

多分僕は一生知らない痛みと
今、病室で戦っているんだ

と思うと

もう、兄は何をしていいのか分からない

知らずに
過ぎて行けば

結果だけを
聞いてしまえば

自動的に
伯父さんになっているのだと思うけど

もうね、どうにもこうにも
全てが手につかない

こうやって文章みたいなのを
書いているので
なんとか落ち着かせようとしてるけど

そうもいかない

ただただ
無事で

元気で居てくれさえすれば
あとはいい

結婚とは別の
家族が増える
って言う感覚

ただただ
全てがうまくいけばいい

待ち望んでいるよ

がんばれ陽子

がんばれ赤ちゃん

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