僕の実家には
ルールが二つある◎
一つは
友達を連れてきたらハグから入り、ハグでお見送りをすること◎
もう一つは
その友達を仏様に紹介すること◎
いつものように
お店の入り口ではなく
裏口から扉を開けると
さっそくヒナちゃんが
『お帰り~!』と
両手を広げて迎え入れてくれた◎
続いて、きじやを手伝っている僕の妹、嘉子にも
『おかえり~』『ただいまー』とハグをした◎
もちろん、それに慣れている神谷、慎矢もそれぞれハグをして
それを見て自然とトゥーさん、マー君、マコトもみんなハグをした◎
疲れていても
眠くても
みんな笑っちゃうよね◎自然にね◎
一通り歓迎の儀式『ハグ』が終わった後
お店のバックヤードを通り抜けて二階に上がった◎
僕の実家は一階がお店、二階が住居という作りになっているのだ◎
二階に上がり
お父さんの仏壇の前にみんなを連れて行き
『これがうちのお父さんです』
と紹介し、これまたそれぞれに線香を上げてもらった◎
そう、この人が居てくれたおかげで
僕も産まれたし
このお店もあるんだよ◎
みんな心の中で自己紹介しながら
手を合わせてくれてありがとう◎
僕がまだこの家に居た頃
ヒナちゃんのデスクの周りには
色々な備忘録のような紙が置いたり、貼ったりしてあった◎
それは
自分へ投げかけている啓発するような言葉であったり
経営をやったことのないヒナちゃんが挫けて、どうしようもなく辛い思いであったり
子供の成長への不安であったり
母としての決意であったり
両親への思いであったり
とにかく、思いついたことを
紙に書いて貼る、という習慣だった◎
今の僕が日記を書き続けるようなものなのかもしれないが
それ以上に、その一枚一枚をこっそり読んで
僕ら兄妹は自然と育てられてきたのだと思う◎
本来ならば
夫である、父(ヒトシさん)が居て
ヒナちゃんの不安や悩みを聞いてあげることが出来て
夫婦でいろんな問題を乗り越えていくはずのようなこと
を
幼い僕らに、話せない弱い部分を
紙に書いて整理していたのだと思う
互いにその言葉たちについて
言及することはなかったけれど
子供に読ませるための言葉でない
それを、黙って僕らは読んでいた
子供は子供なりに
それを読んで、何とかしなきゃ
などと思うものの
やはり若く、友達と遊びたい時には
遊んじゃったり、悩んでいる支えになれているかどうかも
分からなかった
が
そんな僕ら兄妹でも
ヒナちゃんは
どこに行っても
『うちの自慢の子供たちです』
と、人に紹介してくれ
『あなたたちはお母さんの宝物だからね』
『生きていてくれてありがとう』
と、毎日言ってくれていた◎
何が一番良い教育なのかは分からないが
うちのヒナちゃんの教育は、まったくもって最高だと思っている◎
前のいつかの日記も書いたな
家族構成やお金や環境はその都度その都度変わったことがあるが
愛情
というものに
本当に不安になったことがない
いつも僕らの家族は愛で満たされていた◎
何をやるにも
母の中では家族が最優先だった◎
まぁ、身内は最後
という精神も根付いてるけどね◎
愛あるから大人になった今
最後に回されても誰も文句は言わないのだよ◎
『よその家はこうなのに、、』とは言わない◎
先述のルールであるハグも
ある時
ハグ
とだけ、紙に書いてあり
それ以降、ヒナちゃんからその文化が始まり
我が家では定着した◎
こうやって昔は
紙からきっと家族が意識統一されていたのだと思う◎
今回お店をやめるに際し
『なぜお店やめちゃうの!?やめないで!』
とたくさん言われているらしい◎
ありがたいことに
ヒナちゃんのウエルカムや
板前さんたちの、しっかりした仕事で
恵那市において
本当に、存在意義のあるお店だとも思う◎
実際この景気感の中で
経営上で立ち行かなくなってしまったわけではない◎
色んなメディアにも取り上げられたり
お店はますます良い時期に入っていたのだもんね◎
ただ、本来、経営者ではありたくないと
常々思っているヒナちゃんなのに
夫に先立たれて、私は子供を育てる為にきじやを経営して
お金を稼ごう
と決心し、身と心をすり減らしながら
20年間経営してきてくれた◎
一番下の妹である嘉子の結納も済んで
子供の世話がひと段落したので
今回やっと、経営者の重荷を下ろすことができるようになった◎
建物の構造上
二階が住居になるので
一階を誰かに渡してしまう
というのも僕らの実家(と言う場)を守る為に
散々迷ったみたいだけど、お店を閉めることを選択した◎
本当は長男である僕が岐阜に帰れば
全て解決するんだろうけど
ヒナちゃんは僕の立場も考えてくれ
一切それは言わなかった◎
後で知ったのだが
ヒナちゃんは、お店で働いていてくれている
スタッフの為にも、この町の事情も考え
この時期を選んだのだと知った◎
すごいなぁ◎
さまざまな糸を一つ一つ丁寧に解いていくがごとく
本当に立派な経営者だと思う◎