婆ちゃんの栗むき

10周年の日

うちの母親が一通の熨斗袋を持って来てくれた

お祝い

と書いてあるその熨斗袋の裏面には

「お婆ちゃんが栗をむいて稼いだお金です、おめでとうございます」

と書いてあった◎

『ありがとう』と忙しい中で受け取り僕は自分のポケットにそれを入れた。

先日、実家に帰ることがあったときに

実家から車で20分のお婆ちゃんの家にも寄った

広い家のリビングの一番奥でお婆ちゃんは椅子に座り

その日も栗をむいていた

今年で97歳

耳も遠くなり

足も自由に動かせないが

もう何年もきっと

秋は栗の皮剥きの季節

とインプットされているかの如く

静かに栗の皮を剥いていた

毎年毎年使い込まれた包丁は

おそらくもっと大きなものであったと思われる

今では刃が包丁の柄と同じぐらいのサイズになっていた

「道太くんよく来て下さったね」

「お婆ちゃんこの間はお祝いありがとう」と僕

今年の栗ももう終わりがけであること

今朝は8時からずっと栗剥きをしていること

昨日の夜も23時過ぎまで栗剥きをしていたということ

などを聞いた

「その棚にある紙をちょっと出してみんさい」

というので足の不自由なお婆ちゃんの代わりに

棚から紙を出すと、それは伝票だった

1㎏栗の皮を剥くと数百円が近くの和菓子の会社から支払われるようだった

一日剥いていれば僕たちでさえも

手が痛くなる

増して、お婆ちゃんの細い腕だ

「体重も30キロぐらいだから道太君の半分ぐらいかな」

いやいやお婆ちゃん、半分以下だよ

ポケットに入れておいて盗難にあわず良かった

今もその熨斗袋は封を開けれずに取ってある◎

お婆ちゃんずっと元気で長生きしてください◎

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