- 2014年11月11日
- BY 道太
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ほしいものは大体自分が働いたお金で買い
特に何かをせがむわけでもなく
旅行へ連れて行け
早く帰って来い
などを言うわけでもなく
夜遅くまで仕事をしているのに
僕が帰るもっと遅い時間には昨日着たポロシャツが干してあったり
食器棚にはいつもきれいなお皿が並んでいたり
互いに仕事漬けの毎日が積み重なり
どちらかが休みの日に、お昼か夜にご飯を食べに行くことぐらいが
ささやか過ぎる、共通イベント
マルチタスクに対応していない旧型のままの僕のOSは
仕事か家庭かなどの決断を迫られることがよく発生する
きっと最新型のOSを積み込んでいる人にしたら、どちらもスマートにこなせるはずなのに
11月8日
神谷が組んでくれたシフトでたまたま梨枝様と休みが被ったので
お昼ごはんを食べに行き、しっかり飲んだ◎
今、欲しい物は無いか、と尋ねると
『とくに無い』
と
その後、新宿の街をぶらぶらしていると
『あ、欲しいものあった』
と、結婚指輪を買った某ブランドのショップへと誘われ
『これ欲しいんだよねー』
と指を差した先には
200万ぐらいする腕時計が
『でも、こんなの道太に買ってもらえるなんて思ってないから
いつか自分で買うんだー』
と
嘘か本気かわからないけれど
「よし、じゃあ普段のお礼にこれをプレゼントするよ!」
などと言えないことだけは明らかだ
夜は良太の舞台を二人で見に行く予定だったので
その後梨枝様はネイルに行き、いったん解散◎
一人で新宿をぶらぶらしながら
(さすがにどうがんばっても時計は無理だな。)
でも、今の気持ちはちゃんと残しておこう
と
無印良品に入り
2015年の手帳とペンを買い
最初の3ページぐらいに
汚い字で普段のお礼と、あなたのことをとても大事に思っていますと言うことと
やっぱり時計は買えなかったと言うことを書いた
書いたのだが
書き終わって手帳を閉じた瞬間に
急にこれを渡すのが恥ずかしくなってきて
もう一度、町へ出て
ふらふらっと入ったお店で
時計からは大幅に予算の削られた
ネックレスを買った
良太の舞台を見終わり
他のお客さんも来てくれていたので
「よし、この後飲みに行こうぜ!」
といつもならなるけれど
今日は二人でもいいかな、プレゼント渡さなきゃいけないし◎
誰からの誘いも乗らずに
二人で夜の新宿を徘徊
あんなにたくさんお店があるのに
二人ともここに入ろう、という店が見つからず
結局、家の近所で探そう、となり
さらに結局、家の近所も大して何も無く最終的にチェーン店の居酒屋へ
味の濃い料理と
そこそこのボリュームですぐにお腹がいっぱいになり
小一時間で帰宅
何も無い普通の休日が終わる
家に帰りソファーで寝そうになっている梨枝様
僕は無印良品のビニール袋をゴソゴソと
その中にある
さっき買ったネックレスが入った小さな袋を取り出し
『結婚3周年ありがとう◎』
と
僕のOSは『3周年おめでとう』か『3周年ありがとう』かで
ずいぶんとメモリーを消費してしまったので
気の利いた台詞は言えなかったが
目の前には大喜びしてくれている梨枝様が居た◎
その袋の中
時計じゃないけどね
次の日
朝見送るとき
首には新品のネックレスがぶら下がっていた◎
本当の結婚記念日の今日11月11日
手帳はいまだ渡せずに居る◎