ピンポーン
ウォーターサーバー用の水が
家に届いた、そのチャイムで目が覚めた
あぁ、夢だったのか
先に起きてリビングに居た梨枝様がサインをして荷物を受け取っていた
僕はベッドの上で一人、さっきまで見ていた夢を反芻していた◎
当然だが
僕には二人の祖父が居た◎
父方の祖父は僕が小学一年生の時に亡くなった
母方の祖父は青二才が開店する少し前に亡くなった
今回夢に出てきたのは母方の祖父だった
祖父は晩年
徐々に体が動かなくなり
言葉もはっきりと喋ることが出来なくなっていたが
祖母だけは
何を言っているかが分かっていて
僕たち孫は祖母の通訳を介して祖父が伝えんとしていることを
汲み取ることが出来た◎
夢に出てきた祖父は
まだまだ、元気だった頃の祖父だった◎
元気だった頃の祖父は
昔の人で、本当にいつも
祖母にあれよこれよと命令していた
食卓に座るとほとんど動かず
手を伸ばせばとれるようなものまで
妻である祖母に取らせていたりした
その反面
孫である僕たちに対しては
ものすごく優しくしてくれていたので
祖父のその命令口調と言うのは
子どもの前でおちゃらけているだけだと思っていた◎
が
体が動かなくなり
祖母無しではいよいよまともに生活が出来なくなった時でさえも
その態度と言うものが変わってなかったところを見て
祖父は本当に今までそうやって生きてきたんだと知った
それが悪いとか
良いとかではなく
そういう夫婦のバランスだったと知ったのだ◎
夢に出てきた祖父は
僕にご飯を作ってくれた
僕はそれを食べながら
祖父の
『仕事はどうだ』
『家庭はどうだ』
などの質問に答えていた◎
なんて答えたかはあんまり覚えていないものの
その質問と、僕にしては饒舌に何かを答えていたのを覚えている◎
僕も大人になり、幼かった当時よりも
元気であった頃の祖父の年齢に近づいたのか
祖父がかなり若く見えたのも覚えている◎
祖父の質問に答えながら
ご飯を食べていた僕は
ふと気が付いた
祖父が僕に用意してくれていたご飯は
全てラップがかけられていて
祖父がすることと言えば
そのラップを外して
『ほら、これも食べろ』
と僕の前に出して来てくれるだけだった◎
きっとお婆ちゃんが作ってくれた料理なんだな◎
と
夢の中でも悟った◎
『どうだ』と聞いてくる祖父に
僕は『美味しいよ』と言いながら
祖母にも感謝した◎
そして、こうやって書いていると
なかなか伝わり辛いが
その二人の夫婦のバランス感に
大人になった今、少しにやけていた◎
チャイムが鳴って夢だったと知った後も
しばらくにやけ顔で居た
ふ、と
先日92歳の誕生日を迎えた祖母に
電話をし忘れていたのを思い出し
すぐに電話をかけた◎
『お婆ちゃん、道太だけど◎
どう?元気??
さっき夢にお爺ちゃんが出て来てさ』
夢にまで出てきて、孫からの電話と言う
祖母が喜ぶ、演出をしちゃう
お爺ちゃん、さすがだね◎
お婆ちゃん誕生日おめでとう◎
遅くなっちゃったね◎