朝4時半、マンションの目の前にゾウさん(部下の)は居た◎
カタコトの言葉同士で、なんとか挨拶を済ませ
車に乗り込んだ◎
もう、ほとんどだれも走っていない時間ゆえか
ゾウさんは、飛ばしに飛ばした◎
もともと交通ルールがそんなに定められていない国だから
だいたい、みんな思うがままに運転しているんだけど
この日のゾウさんは、その中でも飛びぬけて車をかっ飛ばしていたと思う◎
他の車が止まって見えるほど
右から左から、またクラクションを鳴らしまくり
一般道路だろうが高速道路だろうが
霧の中だろうが、山道だろうが
とにかく一筋の光線のように僕とゾウさん二人きりの車はどこかをかっ飛ばしていたのだ◎
地図で見ると、ものすごく距離があるわけではないと思ったが
ヤンゴンから4時間、目的地のチャイティーヨーの麓の町キンプンへ着いた◎
あの車に4時間も乗っていたのだから、きっと
日本で言えば、東京ー仙台ぐらいか、途中一つも信号なかったしな◎
麓の街キンプンからチャイティーヨーまでは
誰もが、そこへ向かう用のトラックの荷台に乗って行く
と言うシステムになっている◎
ゾウさんが、ジェスチャーで
ここへどうぞ、としてくれた席にストンと落ちるように座る◎
各列6人が前後に10列ぐらい、とにかくぎゅうぎゅうに座らされる◎
そして走り出した、と思ったら
この古いトラックが大爆走◎
ゾウさんの運転が、とても紳士的だったかのように
登ったり下ったりの山道を、けたたましい音を鳴らしながら
信じられないような運転で、ものすごいスピードで走っていくのだ◎
ただ、急な登坂になると車自体は古いので、エンジン音は3倍、スピードは3分の1になる◎
まるでずっと続くジェットコースターのように◎
それが苦手な人は、苦痛でしかないであろう◎
やっと、目的地の近くにつき、聖地巡礼を◎
本当に落ちそうで落ちない岩だった◎
山全体が聖地のような扱いになっており、お祭りなんかがある時は
広場がごった返す、と言っていたと思うゾウさんはきっと◎
コミュニケーションはあまりとれなくても
お互いに、何かで思っていることを伝えようとする
ゾウさんが必至で僕をもてなしてくれているのがすごく分かった◎
「これは何の料理?」とメニューを指して聞いてみてもきっと分からないし、
僕もその後ゾウさんが言っていることが分からないと思う◎
でもそんなのはたいして必要なかった◎
あったらもっと良かったかもだけど、それじゃなく
ゾウさんの言っていることを僕は笑顔で聞くし
ゾウさんも僕の言っていることを聞いては分かったような顔をしてくれる◎
ゾウさんは、僕に好きなものを食べてほしくてメニューを渡してくるが
僕はそのメニューが分からない◎
でも、なんとなくで頼んだものが楽しいし美味しい◎
食べて美味しいというのは、ただそれだけは問題なく表情で伝わると思う◎
おそらく半分の半分も、正確な言葉は通じてないけれど
きっと、言葉を通じ合わせ、正解になるよりも
そんな、曖昧な感じでもいいのだと思う◎
なんだか、日本にいると
電車が正確な時間に来ない、とか
LINEが既読にならない、とか
買った商品が少し汚れていた、とか
今日のお酒はちょっと味が濃い、とか
互いに完璧を求めるような風潮の中で生きているから
相手が少しのミスをしたことも問題になってしまうのに
ここでは、そもそもが緩いから
相手にとっても、自分にとってもきっと寛大なんだろうな、と◎
お互いに求め合わない、のか
お互いに許し合う、のか
完璧に出来合わないから
もっとお互いのことを思いやれるような、
なんだかうまく言えないけれど
そんな、何かを感じた◎
閑話休題
チャイティーヨーの見学も終え、再びジェットコースタートラックに乗り
その後はやはりレーザー光線のようなゾウさんの車に乗り
ヤンゴンに戻った◎
朝4時に出て
夕方の4時にはゾウさん(社長の)オフィスに戻ってきていた◎
まだ、この日帰りの飛行機までに時間はあった
さすがにずっと運転で疲れたゾウさん(部下の)を、これ以上連れまわすのは良くないと思ったのだけど
ゾウさん(社長)が日本語で
「せっかくだから、もうちょっと彼に案内してもらいましょうか」と◎
いやいや、本当に申し訳ない、
と思っていたけれど
ゾウさん(部下)が「行きましょう!」のように言ってくれ
僕は、ミャンマーで最後で一番心に残る観光をすることになる◎