今度中野北口に開店する「角打ち割烹 三才」は勇太の一段上がった料理が中心となるお店だ◎今まで青二才に入って6年間、ずっと料理に専念してきてくれた。神保町店での料理長を始め、今では総料理長となっている。
4年前、一度勇太に今の姿勢を変えてくれと、頼んだことがある。普段そういった類のことはあまりしないが、一応形式上では社長直々の要請みたいなものだ。
「その包丁は何のために研ぐのか」で始まる超長文を送った。その当時の勇太は料理長のポジションで自分の料理をいかに進化させることだけに集中しているかのように見えた。勇太一人のせいではないが、神保町店は崩壊寸前まで行った。
「その包丁は何のために研ぐのか」というのは、立場が上の人間として自分のために能力を使うだけでなく誰かを守るために能力を使う、チームを守るために上の人間が傘になってやる。そういう考え方の持てる上司になってほしい、と。
誰かを守るために捨てられるプライドの方がよっぽど尊大だと。
そんな文章を勇太に送ったのに、自分は出来ているのか、と振り返った時にまだまだ出来ていない、それでも伝えなければならなかった
その心の葛藤を抑えるためなのか、不甲斐なさなのか、未熟な自分にはこれしかなかったのか、思い立って夜中に神保町店に行き、一人で全ての鍋をピカピカに磨いた。
鍋磨きは若手の仕事で社長だからそんな仕事しない、いやいや、青二才とはそんな会社ではないのだ。
そろそろ14年だ、時間が経てば経つほどに「青二才」という名前に重みを感じるようになって来た。
我ながらいい名前を付けたと思う。
今準備している「角打ち割烹 三才」の料理。今回、勇太が主役の店になることもあり、今までの経験を踏みにじられるほどに何度も何度もやり直しをさせられた。経験則なんて一度捨ててしまえのごとく言われ続けた。それでも挫けず折れず、毎日毎日一つ一つ丁寧に食材と向き合い、寝る間も惜しんで料理を組み立て続けた。
以前の勇太の料理を知っている方はおそらくびっくりすることになると思う。まるで別人かのように料理の質が驚くほどに上質なものへと進化した。
他にもこの三才に渾身の思いをかけてくれた人は多い。コロナ禍ではなかったら、こんなに何度も厳しく準備できなかったであろうことも多い。
ついてる◎
今きっと勇太の料理は、今後のこの三才と、青二才を救うことになる傘となる。でも、僕らはいつまで経っても青二才。
3日ほど前に勇太の誕生日と信任を祝して包丁を贈った。買いに行った豊洲の包丁屋で「何か文字入れますか!?」と聞かれ、文字と言ったら名前とかか・・・(佐々木・・・とか勇太・・・とか、、、)「やめときます」と伝えたのだが、途中でやはり気が変わり「すみません、やっぱり文字掘ってください」とお願いをした。
【未在】
未だここに在らず。つまり、まだまだ、ということ。永遠に続く言葉なので、いつまで経っても完成することのない、限りは無いという言葉。そう、つまり「青二才」ということだ◎
未在と彫られた包丁はきっと誰かを守るために使われることになる。まだ先だがお店を開けられるのが楽しみで仕方ない。