リンドバーグと川端康成
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった
先日営業が終わり
いつものように閉めの作業中に眠りに着く
起きたら朝の9時
完全に日が昇っている
さっきまで居た夜闇とは別世界
時間も時間なので
ついでに銀行も寄っていこうと
中杉通りのケヤキからこぼれる朝日の中
自転車をこいで銀行の用事を済まし
梨枝様から指示のあったコーヒーを買って帰る
帰ると主はまだ眠りの中に居た
日頃、僕らとはまた違う
疲れがきっとあるのであろう
『今日は休み』と言うことらしいので起こさないように
コーヒーはしまって、主はそのままにしておいた
その後僕は、シャワーを浴びて
作ってあった朝ごはんを食べ
ちょっとニュースを見て
ネットでいろいろこなし
それくらいのところで
先ほど店で眠った睡眠による残力貯金が無くなり
お昼の風が入ってくるような時間に
浅い眠りに付いた
どれくらい寝たのだろう
目覚ましをかけずに眠る習慣がついてから
起きた時にまず、時間を調べる癖がついた
案の定、ゆっくり出勤準備をしてもまだ間に合う時間であった
僕のデジタルな時計は15時を表示していた
準備をしようと
起き上がってから気がついた
まだ、主が寝ている!
いくら遅くとも夜中の3時には寝ているであろうに
と言うことは少なくとも12時間!
少し前5月21日にリンドバーグ記念日と言う日があった
リンドバーグが無着陸で大西洋を横断した日だそうだ
『翼よ、あれがパリの灯だ』という言葉を発した日だ
僕が、お店で仕事を終え、仮眠のような睡眠を取り
帰ってご飯を食べ
情報を入れ
また仮眠を取って
という
東京から熱海くらいまでの飛行を
小さく刻んでいるのに対し
主はジャンボジェットで一気に太平洋でも横断してしまっているようだ
ここまで来たら
歴史の瞬間に立ち会おう
という閃きが僕の頭によぎった
無着陸でどこまでこのジャンボは飛べるのか
もしかしたら人類初ジャンボ機で月まで行こうとしているのかもしれない
その後燃費のいい
僕のプロペラ機は
二度目の食事をし
再びシャワーを浴びて
『とても気持ちよく眠っているみたいなので
起こさずこのまま仕事に行きます 道太』
と
書置きを残して
青二才に向けて
離陸した◎
トンネルを抜けた彼女はそこに何を見るのであろう◎