• 2011年7月25日
  • BY 道太

オワリハジマリ4

7月の三連休明け

神谷が召喚したマーゴン(台風6号)のおかげで
外は雨が降り続くという

絶対、営業には向かないような日と言うのに

きじやは、超満席だった◎

連日、閉店の噂を聞きつけた町の人たちが
大挙して来てくださっているのだそう◎

中には
閉店と言う噂を確かめに来て
事実と知り、泣いて帰られる方や

そのことで家族会議が行なわれるような方も居たそうで

本当に愛されていたお店なんだと知った◎

いつもは裏口から入るのが通例なのだけど

この日一般営業に
初めて正面の扉から入った◎

忙しい中
アオニポロを着た6人を満面の笑みで
ヒナちゃんも、嘉子も迎え入れてくれた◎

あと、数日で
この営業も終わるのかと思うと
本当に不思議な感じだった◎

この日、さらに
慎矢のお父さんと、お母さんが来て下さった◎

神谷をはじめ、マー君たちには当然初対面なお父さん

開口一番

『好きなものは酒と女です』と◎

さすが、息子さんもその遺伝子ちゃんと引き継いでます◎笑

一気に打ち解け

そして、カウンターが満席で入れなかった
初対面の後藤さん、も僕らの席に入ってくださり

さらにさらに、仕事が終わった
神谷のお父さんとお母さんも、来てくださり

当初6名で座るはずだった席に、11名が座っていた◎

僕の大好きな青二才スタッフ

それに、大好きな家族が加わった飲み会は

本当に楽しすぎた◎

初めてのメンバー構成

でも、この場所はもうじきお店ではなくなる

ハジメテとオワリが混在しながら
どんどんお酒の瓶が空いた◎

神谷のお父さんお母さんとも話した◎

慎矢のお父さんお母さんとも話した◎

我が家だけでなく、やはりどの家の両親も
子供のことが大事で大事で、愛があふれていた◎

慎矢と出会ったときの話や

神谷と一緒に住んでいたころの話

ちっぽけなことだけど
その話の度に

『道太君と一緒におれて、うちの子は幸せやわーありがとう』
って◎

お父さんお母さん
そんな言葉もったいなさ過ぎます◎

僕の方こそ、感謝してもしきれないぐらいに『ありがとう』です◎

このままずっと今日みたいな日が
続けばいいのに、と思ったりもしてしまった

きじやのトイレに行く途中

店内に久しぶりにヒナちゃんの文字を発見した◎

きじやの閉店に際し
ヒナちゃんがお客様に向けて書いた言葉だった◎

僕は
こんなに前向きな閉店の知らせの紙を見たことが無い

こんなに感謝に溢れた閉店の知らせの言葉を見たことが無い

衝撃だった

本来、辛い知らせなのに

なんでだろう、これを読んじゃうと

心が素直に受け入れてしまうじゃないか◎

普通は

『諸般の都合により7月31日に閉店させていただくこととなりました
今までのご愛顧、誠に感謝しております。ありがとうございました。 店主』

ぐらいのものじゃないか◎

ふと、お父さんのお葬式の時のことを思い出した◎

若くして他界した、お祭り好きで人気者だった父の葬式には
1000人もの人が来てくれ、そのほとんどの人が
泣いていると言うものだった

その大勢の人を前に

『ヒトシさんは人が集まる場所が大好きでした
今日はヒトシさんのためにこんなにも集まってくれて
まるでお祭りですね。ぜひ、今日はお祭りにしてあげてください
そして楽しんでいってください』

前向きすぎる

一番辛くて泣きたいはずの

母の、妻の、強い言葉だった◎

大変な時こそ

笑顔

ではなく

大変な時こそ

人に感謝

なのだ◎

感謝するとき

『ありがとう』と言うとき

笑顔になれることを教えてもらった◎

お婆ちゃんが

何かにつけて『ありがとうございます』

と言うのはそういうものだったのか◎

ふと

僕は
大きな『ありがとう』の流れの中で

生かしてもらってるんだ

と◎

このきじやも

おばあちゃんも

ヒナちゃんも

嘉子も

神谷、慎矢のご両親も

青二才のスタッフも

きっと相互に
『ありがとう』で満たされている◎

僕はそれをうまく伝えていくことが出来るのだろうか◎

みんなみんなにありがとう

と言いながらも夜は更けていった◎

ご両親、飛び入りの後藤さんもお帰りになり

その日来て下さった
何十人もの人に

それぞれ、深々と頭を下げて

時おり、ハグをして

ヒナちゃんは見送っていた◎

今まで何万回、何十万回と

この入り口のところで言っていた言葉だね◎

お客さんはその『ありがとうございました』で

安心し、お店を出られるんだと、やっと知ったよ◎

ただ、僕ら子供のために
お店を続ける決心をして

頭を下げ、来てくださるお客さんに
感謝をした日々ももうじき終わる

あんなに悩ませた、経営者の立場ももうじき終わる

でも、それと同時に
きじやという看板も終わる

終わりというのは
どうしても、寂しさがこみ上げてくる

楽しかった今日の宴ももうじき終わっちゃう

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