オワリハジマリ2

僕の実家には
ルールが二つある◎

一つは
友達を連れてきたらハグから入り、ハグでお見送りをすること◎

もう一つは
その友達を仏様に紹介すること◎

いつものように
お店の入り口ではなく

裏口から扉を開けると
さっそくヒナちゃんが

『お帰り~!』と
両手を広げて迎え入れてくれた◎

続いて、きじやを手伝っている僕の妹、嘉子にも
『おかえり~』『ただいまー』とハグをした◎

もちろん、それに慣れている神谷、慎矢もそれぞれハグをして

それを見て自然とトゥーさん、マー君、マコトもみんなハグをした◎

疲れていても

眠くても

みんな笑っちゃうよね◎自然にね◎

一通り歓迎の儀式『ハグ』が終わった後

お店のバックヤードを通り抜けて二階に上がった◎

僕の実家は一階がお店、二階が住居という作りになっているのだ◎

二階に上がり

お父さんの仏壇の前にみんなを連れて行き

『これがうちのお父さんです』

と紹介し、これまたそれぞれに線香を上げてもらった◎




そう、この人が居てくれたおかげで

僕も産まれたし

このお店もあるんだよ◎

みんな心の中で自己紹介しながら
手を合わせてくれてありがとう◎

僕がまだこの家に居た頃

ヒナちゃんのデスクの周りには

色々な備忘録のような紙が置いたり、貼ったりしてあった◎

それは

自分へ投げかけている啓発するような言葉であったり

経営をやったことのないヒナちゃんが挫けて、どうしようもなく辛い思いであったり

子供の成長への不安であったり

母としての決意であったり

両親への思いであったり

とにかく、思いついたことを
紙に書いて貼る、という習慣だった◎

今の僕が日記を書き続けるようなものなのかもしれないが

それ以上に、その一枚一枚をこっそり読んで
僕ら兄妹は自然と育てられてきたのだと思う◎

本来ならば

夫である、父(ヒトシさん)が居て

ヒナちゃんの不安や悩みを聞いてあげることが出来て

夫婦でいろんな問題を乗り越えていくはずのようなこと

幼い僕らに、話せない弱い部分を
紙に書いて整理していたのだと思う

互いにその言葉たちについて
言及することはなかったけれど

子供に読ませるための言葉でない
それを、黙って僕らは読んでいた

子供は子供なりに
それを読んで、何とかしなきゃ

などと思うものの

やはり若く、友達と遊びたい時には
遊んじゃったり、悩んでいる支えになれているかどうかも
分からなかった

そんな僕ら兄妹でも

ヒナちゃんは

どこに行っても

『うちの自慢の子供たちです』

と、人に紹介してくれ

『あなたたちはお母さんの宝物だからね』

『生きていてくれてありがとう』

と、毎日言ってくれていた◎

何が一番良い教育なのかは分からないが

うちのヒナちゃんの教育は、まったくもって最高だと思っている◎

前のいつかの日記も書いたな

家族構成やお金や環境はその都度その都度変わったことがあるが

愛情

というものに

本当に不安になったことがない

いつも僕らの家族は愛で満たされていた◎

何をやるにも

母の中では家族が最優先だった◎

まぁ、身内は最後

という精神も根付いてるけどね◎

愛あるから大人になった今

最後に回されても誰も文句は言わないのだよ◎

『よその家はこうなのに、、』とは言わない◎

先述のルールであるハグも

ある時

ハグ

とだけ、紙に書いてあり

それ以降、ヒナちゃんからその文化が始まり

我が家では定着した◎

こうやって昔は

紙からきっと家族が意識統一されていたのだと思う◎

今回お店をやめるに際し

『なぜお店やめちゃうの!?やめないで!』

とたくさん言われているらしい◎

ありがたいことに

ヒナちゃんのウエルカムや
板前さんたちの、しっかりした仕事で

恵那市において
本当に、存在意義のあるお店だとも思う◎

実際この景気感の中で
経営上で立ち行かなくなってしまったわけではない◎

色んなメディアにも取り上げられたり
お店はますます良い時期に入っていたのだもんね◎

ただ、本来、経営者ではありたくないと
常々思っているヒナちゃんなのに
夫に先立たれて、私は子供を育てる為にきじやを経営して
お金を稼ごう

と決心し、身と心をすり減らしながら
20年間経営してきてくれた◎

一番下の妹である嘉子の結納も済んで
子供の世話がひと段落したので

今回やっと、経営者の重荷を下ろすことができるようになった◎

建物の構造上

二階が住居になるので

一階を誰かに渡してしまう

というのも僕らの実家(と言う場)を守る為に

散々迷ったみたいだけど、お店を閉めることを選択した◎

本当は長男である僕が岐阜に帰れば
全て解決するんだろうけど

ヒナちゃんは僕の立場も考えてくれ
一切それは言わなかった◎

後で知ったのだが

ヒナちゃんは、お店で働いていてくれている
スタッフの為にも、この町の事情も考え
この時期を選んだのだと知った◎

すごいなぁ◎

さまざまな糸を一つ一つ丁寧に解いていくがごとく
本当に立派な経営者だと思う◎

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