僕の誕生日1

その日、僕は仕事に行く前から覚悟はしていた◎

今日はカウントダウンの瞬間にテキーラなり
日本酒なり、焼酎なりでベロベロに酔わされて
次の日、起きるまでの記憶が無くなる事を◎

この青二才で何回か
スタッフの誕生日を見ている人は知っていると思うが
どういうわけか
誕生日は歳の数だけのショットグラスに入った何かを
飲み干さなければならない

という
このご時勢になんとも
理不尽なルールが存在しているのだ◎

当日、お客さんの入りもまばらで

23時ごろまでほとんど
アルコールを口にすることもなく

営業が淡々と進み

『お、これはもしかしたら今日はこのまま終わってしまうんじゃないだろうか』

という
不安と安堵が
同時に心の中に湧いていた◎

ただ、仕事中
何回もマー君やマコトから

『道太さん今日は絶対に酔っ払わないでくださいよ』

やたら念を押された◎

もうね、分かってるんだよ◎

その念押しは
マー君やマコトの
僕を潰すぞと言う意気込みの表れ
だって事くらい。。。

だって、僕、マー君の誕生日の時も

カミヤの誕生日の時も

さんざん飲ませてきたんだもん◎

目には目を

歯には歯を

酒には酒を

どうせそうだ

だから戦争っていつまで経っても無くならないんだ

僕が今回、わが身を呈して
最後の犠牲になったら
もう、こんな理不尽なルール無くしてやろう

トランプだって
麻雀だって

一番負けた人が
次の勝負を始めるかを決めれるんだ

最後に負けて
この戦争を終わらせてやろう

そう誓って
12時カウントダウンを迎えた

案の定
3分前くらいに
神谷が二階から二本のテキーラと
大量のショットグラスを持って降りてきた

12時ちょうど

誕生日の音楽が流れる中

神谷が

『それではお集まりの皆さーン、いよいよ道太の誕生日の時を
迎えました~!!!!!!!!!!!!!!』

と切り出した

僕の最後の時の始まりだ

見る見るうちにショットグラスにテキーラが注がれ

歳の数だけ31杯のグラスがテキーラで埋められた

『んじゃ、行きましょう!まず、一歳から~』と神谷

こんな戦い僕が止めてやるんだ

僕が

もう一度心の中でそう叫び

一つ目のショットグラスに入っているテキーラを勢いよく
体の中に流し込んだ◎

ん??

『んじゃ、次、二歳~!』

もう一度
勢いよくグラスを空にした

あれ?

これ、もしかして
お酒じゃない(=ノンアルコール)のでは?

カウンター周りにいるお客さんは

僕の年を一歳ずつカウントしていき
僕が飲み干すたびに

『おぉ~!いったー!』

『すげえ~!』

などと囃し立ててくれる

僕はどうしていいか分からなくなった

明らかにノンアルコールなこのテキーラ風の色が付いた
液体を、どうやって飲めばいいのか。。

テキーラの体で注がれているゆえに
やっぱりきつい表情をした方がいいのか

お客さんはこの事実(ノンアルコール)を知っているのか

もし、知っていたら
僕がノンアルコール液体を、あたかも
テキーラのように辛そうに呑むのを見て
楽しんでるんじゃないか

いや、でも、テキーラだって思って
囃しているお客さんだったら
これがテキーラじゃないって分かったら
興ざめしてしまうんじゃないか

だったらやっぱり
きつそうに呑むべきか

ところでなぜ神谷は
そんな液体を飲ませてるんだ僕に。。

僕に本当に酔っ払うなよ!ってメッセージが含まれてるのか

などと
疑心暗鬼の塊になりながら
一つ一つ飲み干した◎

おかげさまで
31杯のテキーラ(風液体)を全て飲み干しても

全く酔ってないという
酒豪、いや、酒聖、酒鬼くらいの
強さを誇ることができた◎

相変わらずお客さんは
『すっげえー!マジで道ちゃんすげぇよ!』

などと歓喜の声をくれる◎

テキーラじゃないって
知らなかったのかやっぱり。。。

人から見たら
テキーラを31杯飲み干した人物

であったが、
実際は明らかに素面(しらふ)の僕は

場のテンションに置いていかれないようにするため
頂き物のスパークリングワインをその場で飲み始めた

酒聖だもん

それくらいやるよね笑

でも、そこから先は

実際あんまり詳しく覚えてない笑

鉄人こと洋ちゃんが
お得意の競泳水着姿でケーキを持って登場し

ロウソクがたくさん点いたケーキを
自分で自分の顔に投げつけ

みんなの爆笑を誘い

僕も
だんだんと酔ったような気持ちになってきた◎

そうこうしている間に

入り口の方に居た神谷に呼ばれた

『実は本日、こんな物を用意しちゃいました!』

扉を開けた瞬間
唖然とした◎

リ・リムジン???

青二才の前に
でっかいリムジンが止まっていた◎

『どうぞどうぞ』と
運転手の方が扉を開けてくれ

車内に入るよう案内された

当日その場に来ていた
梨枝様も一緒に案内され

以前、唖然としている僕は
広い車内でどうしていいか分からず

とりあえず

正座(笑

『まぁ、呑みながら楽しんで来いよ』


神谷が満足そうに僕に言い

リムジンは走り出した◎


僕と梨枝様と
運転手さんの三人の車内

『とくに目的地は無いですがどこに行きましょう?』

と運転手さんに聞かれた僕は

とりあえず、呑むか

と思い

『高円寺南口の大将(焼き鳥屋)まで』

と言ったのを覚えている

今思い出すと
自分のチープさが実に恥ずかしい◎

しばらく
都内をグルグルとしながら
車内でお酒を呑み

やはり酔っ払いが進み

マー君たちが
『酔っ払わないでくださいよ』って
言ってたのはこれがあったからか。。

争いは神谷によって終焉を迎えたんだな

などと思っていたのは覚えているけれど

最後、どうやってリムジンを降りたか
あんまり覚えていないのであった◎

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