ソムリエナイフ

ふと、先日梨枝様と行った金沢旅行の時のことを思い出した◎
飛行機は羽田を15時15分に出発すると言うのに
15時の段階でまだモノレールの中に居た◎

ギリギリになって荷物をああだこうだと
出し入れしているうちに、たいして焦ることを知らない僕の性格も伴って

自宅駅を出たのが、もう一秒もロスできないような、本当に最終電車だったのだ◎

電車の中では、どの駅の何番ホームで乗り換えるとか
羽田空港内の最短ルートはどこだ、とかとにかく
飛行機になんとか遅れず搭乗することだけを考えていた◎
羽田空港の駅にモノレールはギリギリ滑り込み
大きな荷物を抱えた僕らは、エスカレーターを駆け上がり
手荷物検査場に最短ルートでたどり着いた◎

あらかじめ携帯に画面を出しておいた
チェックイン用のQRコードをかざして
金属探知機をくぐり抜けた◎
ポーン
くぐり抜けると、金属に反応したときの音が出た◎
あ、ベルトか◎
ベルトを外し、もう一度くぐり抜けた◎

二度目はその機械のゲートは何の反応も
示すこと無く、無事に通り抜け

X線チェックが行われた鞄を再び受け取り

さぁ、いざ搭乗口まで!

と言う時に

隣のゲートを先にくぐり抜けていたはずの梨枝様が
係員に何やらチェックをされていた◎

ベルトも、時計もしてない梨枝様

とっさに
結婚指輪か!?


と思ったものの、それなら僕だってしている◎

近づいて聞いたところ

鞄の中にあったソムリエナイフが
機内に持込できないものとしてチェックを受けてしまったのだ◎
あの、出際のもたもたは
これだったのか◎

必死で許可を取ろうとするも
係員の人は淡々と

「決まり事なので」の一点張りだ

その間にもフライト時刻は近づき
係員は僕らの持ち時間に制限的なものを感じたのか

「本来なら、ここから自宅宛に宅急便で送ることも出来るのですが
フライト時刻も近づいてますので、ここは。。。」

と、目の前の箱にソムリエナイフを入れるよう
暗に促してきた

その箱とは、回収箱で
一度その箱に入れたらもう、手元には戻ってこない

つまり、箱に入れると言うことは
破棄を意味すると言うことなのだ

梨枝様は申し訳なさそうに

「旅先でワインでも飲むかと思って。。。」

などと言っている◎
そのソムリエナイフは
以前、どこかに旅に行った時に
旅先でワインを飲むように買って以来

どこかに行く時には毎度毎度連れ立ってきた

我が家に一本しか無いそのナイフは引っ越す前も
引っ越した後も、何本ものワインを開けてきた◎

言わば二人の思い出の詰まったものだった

時間がない

自宅で、もたもたしたことを悔やんでも
もう遅い
ここで破棄しなければ

飛行機に乗れない
さらに、ここでもたもたしても

飛行機が飛んでしまう
僕らにはもう

迷っている暇はなかった

そして、ついに

あきらめた

飛行機を◎
その後、東京駅から金沢行きの深夜バスのチケットを確保して
一路金沢へ向かう車内、二人楽しくワインを飲むのです◎
30年後こそは、そんな二人になっていたいと

引っ越し先で妄想しながら

一人で長風呂に入った休日の朝です◎
捨てることになってしまったソムリエナイフ以外に
うちにはソムリエナイフがまだ3本もあるのでした◎

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