• 2013年2月11日
  • BY 道太

石ころの頃

ある日、ある瞬間
地球上の酸素が
何らかの化学反応でなくなったら

どうしよう??

呼吸もできず

ただ、その瞬間から絶望へと堕ちていくだけだ
小学生の僕は、習ったばかりの生物と酸素の関係を縁日で知ることとなった
酸素が十分に無く、小さな手さげビニール袋の中で
腹を横向けに泳ぐ金魚を見て我に当てたのだ
小さなポリエチレンのクリアーな袋に
水と、赤く光る金魚

遠目で見ればこんなにもオシャレなバッグは無いのだ

ヴィトンやシャネルなどのどんなブランドにも負けず

街灯の灯りを乱反射する
そんな、切なく綺麗なバッグを手にしては
ただただ、当時の僕は無邪気に笑っていたが

中で辛そうにする金魚を思って以降

他の屋台はスルーして一目散に家に帰り、家の水槽に放り込んだのだった
某日

営業後に

僕とヤスは近所のお店に飲みに行った◎

飲みに行った、と言っても始発までの時間を目指して、軽く一時間、だ◎

お互い、今日は明日から来る週末を考え
セーブしながら嗜んでいた◎

が、たまたま、ホントにたまたま阿佐ヶ谷で仕事上がりの慎矢と彼女の梨菜がお店にやって来たのだった◎

最後と決めた一杯が
もう一つ増え、さらにもう一つ増え

さすがにアルコールに対する自制心

お店を出たが
空腹には勝てず、連れだって
某立ち食いそば屋に◎

男特有のノリで
富士山盛りと言う、深夜には
絶対セレクトしてはいけないボタンを
590円と引き換えにチョイス◎
15分後には
僕、慎矢とヤスと言う
満腹でホロ酔いな男が三体出来上がっていた◎
ま、それでも明日の仕事を考え
三体はそれぞれ、帰途に着いた◎

僕は中野駅から自宅のある荻窪駅方面の電車に乗り込んだ◎

荻窪駅はここから数分だ◎

席は空いているけど、僕は座ったら寝る、そんなダサい自負から頑なに座らず電車に居た
こんなこと言ってはなんですが

ジェイアールさん、あの座りやすいようにデザインされたベンチシートとその下からのヒーターはズルいっすよ

どうしたって座りたくなってしまうじゃない◎

ついつい、ホントについつい座って
座り心地をチェックしてたら

まんまとジェイアールさんの策にハマり
ふと

気がついたら
船橋
寝起きの僕でもそんなのはわかる

つまりアレか

これは、つい寝過ごしたってことか、

時間を見やると午前7時

あーやっちまったかやっぱり。。。

などと思う間もなくとりあえず電車を降りる◎

そう、千葉行きのこの電車に乗り続ける限り
僕は我が家のある荻窪にはたどり着けないのだ◎

さっきまで一緒に居たはずのヤスに画像を送りつける

向かいのホームの電光掲示板には三鷹行きの電車の時刻が出ていた◎
あと、3分後だ◎

もう、お酒も満腹感もそんなには無い◎

冷静に次のことを考える脳が戻ってきたのだ◎
荻窪駅では西口を使う◎
西口と言うのは一番三鷹よりに改札があるのだ◎

それを見越して僕は
慌てる様子も無くホームをぐいぐい歩いた◎
ちょうど端まで歩いた頃に
僕を運んでくれるいつもの総武線車両が
ホームに流れ込んできた◎

扉が開く

僕は颯爽と車内に入る

酔って、満腹で
電車を寝過ごした男には見えないだろう◎

扉が閉まり電車が再び動き出す◎
うーん、いい朝だ◎

これから出社の皆様お疲れ様です!

なんだか、とっても気分がいい◎

何か違和感がある◎
なんだろう
まだお酒残ってるのか◎
辺りを見回す◎
僕はその2秒後

絶望する
ヤバい!
これ、
間違いなく

女性専用車両だ

誰一人として

男性は乗っていない
そりゃそうだ、だってそういう車両なんだもん

辺りをもう一度見回し確認しよう、間違いかもしれないし
いや、キョロキョロしたら、余計に怪しい。。。
ま、そんな時は他に集中しているフリで携帯だ◎

携帯に集中して、皆さんの冷たい視線とか
そんなのも一切周り見えてないですよーオーラを出そう◎
いや、そんなことしたら逆に撮影でもしてるんじゃないかと思われかねない。。。

もう、打つ手は無い。。

路傍の石になりたい。

誰からも、見向きされないような石ころになりたい。。

とりあえず、石になろう。
『当列車、朝の7時から8時までの間、先頭車両は
女性専用車両となっておりまーす。ご協力ください』

と車内放送が流れる

そんなこと分かってるよ

分かってなかったけど。。。。

分かってるからいちいち放送しないで!
酒臭いかもしれないから
息を吸ったり吐いたり、それでさえも躊躇われる◎
右手は吊革をつかみ

左手は鞄をしっかりと持ち

目を瞑り

僕は一駅の間、石になった◎
途中で目の前に座っていた女性が席を立つ

完全に不審者扱いだ。。。
が、石に意思はない
呼吸も最小限にして

再び駅のホームに流れ込んだ電車の扉が開くと同時に

僕は何事もなかったかのように明るい世界に飛び出たのだ◎

明るい駅のホーム

空気が吸えることのありがたさを実感し

大きく深呼吸した僕の髪は寝癖がついていた◎

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