- 2014年12月17日
- BY シンヤ
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酒と人。
お酒は好きだ。
ワイン、日本酒、カクテルなど、何でもいける方。
ただ、お酒そのものよりも、むしろ人と飲むお酒が好きだ。
何かを祝う時、誰かを励ます時、何かを忘れたい時、
人は持っているグラスやお猪口を合わせる。
「乾杯」
知っている人なら何気なくしている行為も、
知らない人、初めて会った人なら
それだけで繋がれる、繋がれた気になれる魔法の言葉。
昔から人が好きだと言ってしまってる自分は
もしかしたら人より乾杯の数が多いのかもしれない。
あ、うちの社長には敵わないか・・・
いや、「人が好き」よりも「人と繋がることが好き」だ。
だってその時に、その瞬間に生きてるって感じるから。
生きてるって実感することの一つだから。
昨日の営業中。
カウンターにいたお客さんが誕生日だったことを知り、
神谷さんがデザートのメッセージを描き、まことが盛り付けた。
ミナミはホール側からお祝いしようと、今か今かと待っていた。
そして自分はゆっくり、ゆっくりとカウンターの照明を落とした。
「ハッピーバースデー!!」
その時近くにいたお客さん全員がカウンターを見る。
よし、と神谷さんがショットグラスを出し始めた。
カウンターのお客さん全員でテキーラをやるつもりだ。
いや、カウンターのお客様全員に付き合って頂いて、
テキーラをお飲みになって頂こうと。
その瞬間、と同時に1階のお客さん全員もカウンターを見ていた。
ので、自分は思ってしまった。
ここにいる全員で乾杯がしたい、と。
すぐに2階に走る自分。
1階では神谷さんがショットグラスにテキーラを注ぐ。
2階からショットグラスを持ってきた僕は、
まさに今、次々とテキーラが注がれている、
カウンターに並んでいるショットグラスたちの横に、
また新たなショットグラスを足していった。
ん?
神谷さんが怪訝な顔をする。
自分はニヤっと笑い、神谷さんはすぐに自分の意図を察知する。
その神谷さんに小言を言われながらも、ワガママを続ける自分。
「アレ流しましょうよ。」
苦笑いをしながらアレを流してくれた神谷さん。
店内に流れるテキーラソング。
テキーラを注がれて”完成した”ショットグラスを、
ミナミが各テーブルに運ぶ。
いつも来てくれるお客さんたちは、
「また始まったよ」と渋々テキーラを手に取る。
「火曜日から何やってんだよ」なんて声が聴こえてきそうな顔だ笑
その受け取り方も慣れたもので、見ててもしっくりくる。
テキーラの受け取り方を、まだ慣れてないお客さんたちに
教えてあげてほしいくらいのベテランぶり。
あっちのお客さんは全員が前のめりで、
テキーラの態勢万全。テキーラ歴がまだまだの若い衆。
ただ、前のめりで勢いがある。
こっちもそれに応えないとって気持ちになる。
おっと、こっちのお客さんは新しい顔だ。
実は自分はこの子たちに照準を絞っていた。
1階をざっと見回して、そのテーブルだけ異色というか、
他はいつも顔を出しに来てくれるお客さんたちばかりの中、
周りの喧騒に気圧されることもなく、二人の女性は鎮座しておられた。
自分は、カウンターで神谷さんがテキーラをする声にいちいち反応して、
その二人が楽しそうに、人ごとの様に傍観してる姿をずっと目にしてた。
ので、こんな面白そうなチャンスはないぞと、
神谷さんにワガママを聞いてもらった訳だ。
テキーラを運ぶミナミがそのテーブルの前で止まる。
よし、何も言わなくても分かってくれてるじゃないか、ミナミ。
「えー?!」
と驚く二人を確認して乾杯に向かう。
さっきも書いたけど「火曜から何やってんだよ」なんて声が
聴こえてきそうだったので、
『安心してください。今日は金曜日です。』
と、今日が火曜日であるという皆さんの不安と勘違いを
払拭して差し上げました。
最後にカウンターのお客さんにも、
全員テキーラが行き渡るのを確認して、
その瞬間、そこにいてくれた人たちと乾杯をした。
この瞬間が好きだ。
だって、その「乾杯」っていう2文字の魔法で
その瞬間だけでもみんなが一つになれる、
繋がることができるから。
自分は「人と繋がる酒」が好きだ。
いつもこんな自分のワガママに付き合ってくれてありがとう。
飲み過ぎにはみんな注意してね。
僕らも飲ませ過ぎには注意しようね。
青二才に来てくれる全ての人たちへ。
本当にいつも近くで繋がってくれて、
乾杯で繋がってくれてありがとう。
本当に心から感謝してるし、大好きです。
初めて来てくれた方は、ひょっこり乾杯に行ったら
付き合ってくださいね。
嫌な顔は店の外に出てからにしてくださいね。
「人と飲むお酒が好き」
の後にやってくるのは、
やっぱり、
結局、
僕は「人が大好き」だ。
そして、この人のことも大好きだ。
山ちゃん。
来年1月に偲ぶ会が執り行われるそうです。
こういう時は献杯だなんて言うけど、あるお客さんが言ってた。
『山ちゃんは献杯じゃなくて「乾杯」だよね。』
って。
この人が好きだった乾杯をみんなでしようよ。