ツンデレ突風
もう、25年ぐらいずっと
慎矢の先輩として君臨し続ける僕
おかげで
社会人になった今でも
慎矢は僕のことを
「道太先輩」と言う◎
もう今更なんと呼ばれようが構わないけれど
もう今更特に変える必要もないなどとも思う◎
たまに慎矢に仕事を振る時にだけ
はたまた、飲みたくない慎矢を強引に飲みに連れ出す時にだけ
ぼくはびゅうびゅうと
先輩風を吹かせる◎
風を吹かす方も25年来なら
風を受け止める方も25年来だ◎
はいはい、またいつものアレですね
と当たり前かのように連れ出される◎
上には上がいる
慎矢の先輩であるこんな僕にも
当然、先輩がいる
その中でも、年中吹いている偏西風のように
会うたび会うたびに先輩風を吹かしてくる先輩がいる◎
気がつけば、その先輩とももう15年ぐらいだ◎
先日、体調の悪い僕に
「いいから飲め」とお酒を強要していただいた◎
「いや、体調が。。。」などという理屈など通らない
「俺は道太にそんなつまらない酒の飲み方は教えてない」というありがたいお言葉までいただいた◎
「体調なんて気の持ちようだ」
「昔の道太はこんなんじゃなかったのにな」
「すみませーん、このお店で一番強い酒をこいつにやってください」
などとパワハラ、サケハラ、の総攻撃を浴びせていただいた◎
「年内にもう一度顔出せよ」と仰っていたので
昨日の営業後、電話をし顔を出しに行った
当たり前のように、まぁ、飲めよ、と
当たり前のように、はい、いただきます、と
かなりの量を店で飲んでいたのだけれど
「よし、うちで飲み直そうぜ」
と◎
先輩の家に場所を移し
先輩のありがたいお言葉をいただいているうちに
どこかのタイミングでついつい寝落ちしてしまったらしい
「おい、寝てんのかよ」
の言葉の後に
「じゃあ、おまえこっちで寝ろよ」
と布団が敷いてあった
先輩は先輩の布団に寝に行った◎
起きたら昼に近い晴れた朝だった
冷蔵庫から冷たいお茶を出してくれた
来ていた上着を羽織るだけで準備が済んだ僕を
ちょっと待ってろと言わんばかりに
「俺ももう出るから、一緒に出るぞ」
と
「いやあ、いい天気だな」
「昨日はよく飲んだな」
と先輩風を吹かしまくって気持ちの良い先輩
「けどお前、ちゃんと寝てんのか毎日」
「体だけは壊すなよ」
とってもツンデレな先輩
「あのラーメン屋は並んでるのにまずい、隣の方がよっぽど旨い」
「この辺は新宿までチャリで10分、お前んとこの店までも今度チャリで行ってみるわ」
などと話しているうちに
僕の帰る方面のバス停までわざわざ見送ってくれ
そこで僕だけバスに乗って自宅へ帰った◎
お酒の強要やパワハラが問題視されて幾年
ふと
毎日、全ての人がこの人だったら大変すぎるけど
僕には時代錯誤のこの先輩がいる、ってことがとても大事なことなんだなと思う◎